損失回避:候補者が内定を辞退する理由
毎日、アジア各地のリクルーターが候補者に求人情報を提案したり求人者に紹介したりしていますが、時々内定は辞退されます。マーケットがどうであれ、クライアントが欲しい優秀な候補者は、ほとんど転職を考えていないのが現実です。
候補者が内定を辞退する理由は、ノーベル賞を受賞した作家のダニエル・カーネマン(Thinking, Fast and Slow 2013)による損失回避という心理状態だと考えられます。多くの研究では、何かを得ると思うより、何かを失うと思う方が精神的な影響が2倍強いらしいです。リスク回避の現象により、人々が利益を得ることよりも損失を回避することを好むので、候補者は同じレベルの利益と損失を含む結果を評価することになります。損失の衝撃が大きいので、損失が利益を上回ることもありえます。
損失回避というのは、50ドルを失った人の悲しみは、50ドルをもらった人の喜びより大きいという意味です。したがって、一部の候補者は、給料が10%増えたとしても、自分が持っているものを失うことに対する恐怖を補うには不十分かもしれません。
損失回避の理論は、多くの候補者が経験したことある「授かり効果」の説明にも役立ちます。授かり効果とは、自分が持っていない商品よりも、自分が持っている全く同じ物に対して、はるかに高く評価するという現象です。車を売ろうとした人は誰でも授かり効果を経験したことあるでしょう。
去年の夏に、あるクライアントからの内定を辞退した候補者がいて、理由は誰も理解できませんでした。彼は適度なパイプラインを持っていて、ヨーロッパの製薬会社の管理職を務めていました。そのクライアントは豊富なパイプラインがあって、彼に20%の昇給とディレクターの肩書を約束して、キャリア的の将来性も魅力的でした。しかし、その候補者が損失に対する恐怖が非常に強かったため、授かり効果によって現在務めている会社を異常に良く見えていたのでしょう。論理的に彼がオファーを受けると思っていましたが、現在働いていた会社と感情的に繋がっているようでした。
人間は、よく感情で判断を下ろして、事後に自分の行動を理論的に正当化します。リクルーター、ラインマネージャ、人事担当者の皆さんに気を付けて頂きたいのは、私たちが提示するオファーが候補者から見ると、違うものに見えがちです。候補者にとっては何を失うかを常に一番最初に考えて、自分の仕事を普通より魅力的に見える時もあります。
どうすればこのような心理的力に対抗できるのでしょうか。
- 説得力のある話をします。御社のオファーが候補者の現職より良いと思わないでください。実際に自社のチャンスのほうが良いとしても、関係ない時もあります。重要なのは、候補者の見かたです。彼らの視点から考えでみましょう。彼らには何を失うのだろうか?
- 転職のストレスを認め、共感します。候補者に不安について、そして現職では何が素晴らしいかについて話してもらいましょう。ポジティブなことを考えてもいいです。転職するのが半分決まっていると思わないでください。
- 面接プロセスを速めに進めます。採用には、ベル曲線があります。成功採用のためには、内定を曲線のトップの75%までに受けてもらわないと、新会社からのオファーを辞退する方向にゆっくりと滑り落ちます。
- 取引が完了だとすぐに思わないでください。候補者と会って、オファーの内容について話し合い、質問に答え、不安事について話しましょう。
- これを覚えておいてください:オファー自体が良くも悪くもありませんが、すべて見方で変わります。